天幕芝居

   『鉄の卒塔婆'69』                       あ ら す じ
高校の先輩にあたる田中康夫の「なんとなくクリスタル」が映画化され同名のレコードも発売される。そんな時代・・・学生闘争後、閉鎖されていた東大医学部の一室で緊急帝王切開手術が行われる。妊婦の腹より生まれたのは、ヘルメットをかぶった全共闘闘士の残党『鉄』。彼の目に移ったのは、バブルに浮かれ渋谷109の前いちゃつく亡国の徒であった。抗議する若者の絶滅をはかる公権力によって交通事故を装って闇に葬られそうになる鉄は時の流れという川を下ってくる師匠と弟子によって救われる。横文字を並べ追りくるリスタル族。時代の軋轢に翻弄されるように、再び神田をカルチェラタンとし、炎の抗議活動を開始する鉄。追跡をやめない公安は次第にその包囲網を狭めていく。やがて、機動隊の催涙ガスが撃ち込まれ、水平発射したガス弾が鉄のヘルメットはじき飛ばす。突如崩れたレンガの壁の向こうにそそり立つ安田講堂。瀕死の鉄は再び屋上に立ち叫ぶ。

東大紛争の再現を狙った本作品は到底屋内舞台での上演は不可能と思われた。
運動会用のテントを二つ並べて客席とし、
舞台は走り高跳び用のポールに暗幕と
ビニールシートを張り巡らせた。

風が吹くたびにめくれ
待機している役者が見切れる。

けれどこの
はためくブルーシートが
青色天幕としての
出陣式だった。

ガソリンが燃え、自動車が突っ込み
畳が飛び、洗濯機が横転する。

水しぶきがあがり、
安田講堂は
旭山の漆黒の闇に向けて
吸い込まれていった。


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